ニセコ☆冬物語
ウィンタースポーツ・グルメ・源泉かけ流し温泉を堪能
北海道・ニセコエリアは日本有数のリゾート地です。その名を広めたのは上質なパウダースノー。数あるゲレンデの中でも「ニセコ東急 グラン・ヒラフ(以下ヒラフ)」はエリア最大の規模を誇り、世界の人々を魅了しています。
今回は原子力文化財団(JAERO)の協力を得て、冬のニセコエリアで、ウィンタースポーツ・おいしい料理・源泉かけ流し温泉を楽しみました。
ニセコエリアへは、札幌市内や新千歳空港から車で約2時間。どちらからも大きな峠を越えなくてはならないので、車で向かう際は十分な注意が必要です。ニセコ町のカントリーサインが示す通り、ここは北海道屈指のスノー天国。戦前から「東洋のサンモリッツ」と呼ばれています。
羊蹄山が迎えてくれました。山頂までくっきりと見える日はそれほど多くありません。これだけでテンションが上がります。道路わきに建てられている矢印は、道路の位置を表すためのもの。吹雪になると一面真っ白になるため、あちこちに設置されています。
車を走らせていると、キタキツネに出会いました。写真を撮ろうとすると迷惑そうに逃げていきます。慌ててカメラを抱え、羊蹄山をバックにしたベストショットを撮影。金色の体毛を揺らして、森の中へ走り去っていきました。
時間に余裕があったので、真狩村の「羊蹄山の湧き水」で水を汲んでいきます。羊蹄山に降った雨や雪溶け水が数十年の歳月をかけてろ過され、ミネラルたっぷりの天然水が噴き出しています。
この水でコーヒーを沸かしたり、お米を炊いたりすると、味が引き立つと言われています。ウイスキーが好きな人は水割りで味わってみてください。
ニセコユナイテッド
アンヌプリ山(標高1,308.2m)にある4つのゲレンデは「ニセコ・ユナイテッド」と総称されています。それぞれ別会社の運営ですが、山頂やシャトルバスで連絡しており、全山共通のリフト券も発売されています。
「ニセコ東急 グラン・ヒラフ(当時はニセコひらふスキー場)」は、1961年12月17日に2基のリフトがかけられたことによりスノーリゾートとしてスタートしました。現在は総面積135ヘクタールにバリエーションに富んだ22本のコースを有し、エリア最大の規模を誇っています。
ヒラフは羊蹄山を真正面に据えた最高のロケーションで滑走することができます。標高が高いので、気象状況によってはダイヤモンドダストや雲海、運が良ければ山頂から雲に向かって滑り降りるという体験もできます。パウダーもグルーミング・バーンも楽しめるスノースクートで滑走しました。
スノースクートは、自転車状のウィンタースポーツギア。ハンドルを使った操作で雪山を駆け抜けることができます。グルーミングコースだけでなくパウダーコースも楽しめるヒラフに最適です。
ゲレンデで見かけることが少なく、子どもたちから「あのオジさんカッコいい!」と羨望のまなざしを送られます。顔全体を覆っているのに、なぜオジさんとバレたのでしょう?
いい感じで冷えてます
この日の気温はマイナス8度。マイナス10度以下になると雪に含まれる水分量が少なくなって浮遊力が低下するため、雪面と板に抵抗が発生します。寒すぎても暖かすぎてもダメ。パウダースノーになるには絶妙なバランスが必要です。
ヒラフのパウダースノーには、転んでも痛くない優しさと、スライドするたびに雪煙をあげる楽しさがあります。何よりも誰も滑走していない雪面に初めてラインを描く喜びはたまりません。
かつては日本一雪崩が多いゲレンデだった
アンヌプリ山はかつて国内で最も雪崩による死亡事故の多い山でした。ゲレンデだけでも十分に楽しめるにも拘わらず、誰も滑走していないラインを求めて滑走する人が後を絶たず。パトロールの呼びかけもむなしく、事故が後を絶ちませんでした。
「規制しても立ち入ってしまうのならルールを設けて自己責任のもとで立ち入り可能にすればいいのではないだろうか」。遭難者の救助に駆り出されていたロッジ・ウッドペッカーのオーナー新谷晩生(しんやあきお)さんは、そう思いつきました。
新谷さんは、かつて世界中の難所に挑戦した冒険家です。リフト会社や行政から、「ルールを作ることはゲレンデ外に出ることの奨励につながる」、「事故があった時に誰が責任をとる」など反対論が上がり、スムーズに話は運びませんでした。
新谷さんはそこで「責任論を語っても事故はなくならない」と主張。2000年に、ニセコ雪崩事故防止協議会が発足し、ロープを超えてまで滑りたい人と、その人たちの安全を守るための「ニセコルール」が制定されました。
ニセコルールには「スキー場外へは必ずゲートから出なければならない」、「ロープをくぐってスキー場外を滑ってはならない」、「ゲートが閉じられている時はスキー場外に出てはならない」、「立入禁止区域には絶対に入ってはならない。なお、捜索救助、調査活動は除外される」、「小学生のみのスキー場外滑走を禁止する」の5つが記されています。
「ルールは自由を守るために存在している」ということを理解している者だけが、ゲートの先に進むことができるのです。
新谷さんの功績に敬意を表して花園エリアに「レジェンド・オブ・シンヤ」と名付けられたコースがあります。レジェンドと名乗るだけあって、斜度がきついボコボコのモーグルコースで、攻略は困難です。ちなみに個人名がついているコースは日本唯一です。
グランヒラフは時間や天候によって様々なシーンを見せてくれます。パウダースノーが風に流されて波のような模様を作り、雪面は太陽の光を反射してダイヤモンドのように輝いていました。夢のような光景にテンションが上がり、「ガンガン滑るぞ!」と思っていると...
いきなり猛吹雪に!
ここは神々が棲む山。人間の力など及びません。自然をリスペクトして、ランチでも食べながら天候回復を待ちましょう。
取り残されたロッヂ
グランヒラフ内には、古き良き時代を感じさせる「ロッヂ望洋荘」があります。ここへつながる道路は一切なく、宿泊するためには宅配便で荷物を送らなくてはなりません。食事をする際も上級者コースを滑り切らなくてはならないなど、通好みな魅力に溢れています。
望洋荘は昭和30年代に保養所として開設されました。当時はここまで道路がありましたが、ゲレンデの拡張によって飛び地のようになったそうです。東急リゾートの系列ではないため、グランヒラフの飲食店営業情報には載っていません。日本の食堂らしいメニューのほか、セレブな方のために、イクラ丼やカニ丼も用意されています。
ロッヂ望洋荘
住所 虻田郡倶知安町字山田209番地グランヒラフスキー場内
電話 0136--22--1274
営業時間 11:00~15:00 (目安)
豚汁(ライス別)は、具沢山なのに650円とリーズナブル。ニセコで知り合ったアメリカ人のスノーボーダーが、「アメリカならリフト券は約2万円はするし、どこの国でもリゾートなら食べ物が高くても当たり前」と言っていました。
スノーモービルなどで食材を運んでこなくてはならない環境ながら、この価格はかなり良心的。冷えた体も財布の中身も暖めてくれました。
夕方になり、ナイター営業を行う一部のコースを除いてリフトの営業が終了。夕暮れが近づくと、広大なゲレンデにいるのは一人きり。羊蹄山に向かってラスト一本を堪能しました。
こだわりの生ラムがおいしい人気店
本日のディナーは、「ニセコジンギスカン」でいただきます。創業以来、生の羊肉にこだわり、新型コロナウイルスで仕入れが難しくなった現在も、その姿勢は崩していません。
そのおいしさは「ジンギスカンの価値観が変わる」と驚くほど。平日でもお客さんが絶えない人気店なので、必ず予約を入れてください。
ジャーン(死語)
ニセコジンギスカンセット(肩ロース・もやし・タマネギ)に、単品でショルダーを追加。ジンギスカンは北海道の郷土料理と言われていますが、国産肉は全体の1%未満で、ほぼ輸入肉。鍋料理でありながら一滴も水分を必要としないという風変わりな食べ物です。
炭火でさっと焼き上げて、自家製のタレをくぐらせます。臭みがないのでレモン塩で食べても最高。ショルダーはあっさり、肩ロースは脂のうまみが口いっぱいに広がりました。おいしいものを食べると幸せな気持ちになりますね。ごちそうさまでした。
ニセコジンギスカン
住所 虻田郡ニセコ町曽我476-14
電話 080--8167--6754
営業時間 17:30~21:30
定休日 月曜日